刑法を優先順位の一番に置いた理由 ― F・F・Aの3年で分かったこと
刑法を最優先にしていたのは、伸びるからではなく、外すと沈むからです。予備試験を3回受けて刑法がF・F・Aだった筆者が、どこで落として、何を変えてAになったのかを、令和5年から7年の過去問に沿って書きました。
ギリギリ合格研究所
研究員
まずはじめに
前回、筆者が予備試験でとっていた優先順位を出しました。
刑法 = 民訴 = 刑訴 = 実務基礎 > 商法 = 選択科目 > 民法 > 行政法 > 憲法
今回は、この一番上に置いた刑法について書きます。
同じ「一番上」でも、理由が違う
民訴・刑訴・実務基礎を上に置いた理由は、やれば伸びるからです。やることがはっきりしていて、努力した分だけ返ってくる科目です。
刑法は違います。上に置いた理由は、外すと沈むからです。
刑法は、受験生のレベルが比較的高い科目だと感じます。他の受験生も仕上げてくるので、少しでも変なことを書くと、それだけで相対的に置いていかれます。伸ばすために時間を使うのではなく、落ちないために時間を使う。
3年分の成績 ― F・F・A
筆者は予備試験を3回受けています。刑法の評価は次のとおりでした。
| 年 | 刑法の評価 |
|---|---|
| 令和5年 | F |
| 令和6年 | F |
| 令和7年 | A |
令和6年は、手応えとしてはDくらいだと思っていました。それがFだったので、刑法は失敗があまり許されない科目なのだと考えるようになりました。
学習が進んでから見返すと、なぜ評価が悪かったのかは一目瞭然でした。年ごとに書いていきます。以下は筆者の答案の振り返りであって、模範解答でも、出題趣旨の解説でもありません。問題文そのものは、記事末尾に挙げた法務省のページから確認してください。
令和5年 ― 第2行為で結果が生じた事案
被害者を殺害しようとして首を絞め、死んだと思い込んで崖から落としたところ、実際には崖から落とされたことで死亡した、という事案でした。第1行為ではなく第2行為で結果が生じたときに、当初の故意で既遂を認めてよいのかが問われます。いわゆる遅すぎた構成要件の実現の問題です。
ここを、しっかり書くことができませんでした。重要論点なので、合格した人はほぼ全員が書けていると思います。
令和6年 ― 途中から加わった共犯と、傷害の帰属
前半は、落とし物のケースを拾った行為と、駐輪してあった自転車を持ち去った行為の評価。後半は、甲が被害者に暴行を加えた後、通りかかった乙が「一緒に痛めつけてくれ」と言われて暴行に加わった、という事案でした。
前半の財産犯については、ある程度は書けていたと思います。落としたのは後半です。途中から関与した者が、それ以前の行為や結果について責任を負うのか(承継的共同正犯)。 そして、どちらの暴行から生じたか分からない傷害を、どう帰属させるのか(同時傷害の特例、刑法207条)。 この2つを書けていませんでした。
前半で点を拾っても、後半の柱を2本落としたので沈んだのだと思います。
令和7年 ― Aに変わった年
Aだった年は、書ける論点が増えたというより、どこを厚く書くかを外さなかったという感覚に近いものでした。設問1は所有権移転登記が済んでいない不動産を第三者に売却した事案、設問2は人違いのまま計画を実行してしまった事案で、どちらも「この問題で一番配点が来ているのはここだ」という中心が比較的はっきりしていました。
問題集の次に読んだもの
筆者が論文の教材として使っていたのは、アガルートの重要問題習得講座のテキストです。ただ、令和6年の結果を見て、これだけでは足りないと感じました。
そこで読んだのが、**『刑法事例演習教材〔第3版〕』(井田良・佐伯仁志・橋爪隆・安田拓人、有斐閣、2020年)**です。解くというより、読みました。
読んで掴めたのは、個々の論点の中身よりも、メリハリの付け方です。刑法は論点が多い科目ですが、1つの問題の中で配点が集中しているところは限られていると思いました。そこを厚く書き、それ以外はあっさり書く。この配分が、答案の評価をつくっていると感じました。
入口を外すと、相対的に沈む
これは他の科目にも言えることですが、問題意識の入口を外すと、そのあとどれだけ丁寧に書いても相対的に沈みます。 逆に言えば、入り口さえ外さなければ、周辺の精度が多少落ちても致命傷にはなりません。
なので、事例演習教材を読むときも、過去問を見るときも、**「この問題で一番分厚く書くべき論点はどれか」**を最初に考えるようにしました。答案の全文を書くより先に、そこだけを取り出す作業です。これだけでも、刑法への取り組み方はかなり変わりました。
参考
問題文と設問は、法務省のページから確認してください。
この記事の記述は筆者の振り返りで、客観的に正しいことを保証することはできません。
- 令和5年司法試験予備試験問題(論文式試験問題「刑法・刑事訴訟法」)
- 令和6年司法試験予備試験問題(論文式試験問題「刑法・刑事訴訟法」)
- 令和7年司法試験予備試験問題(論文式試験問題「刑法・刑事訴訟法」)
- 井田良・佐伯仁志・橋爪隆・安田拓人『刑法事例演習教材〔第3版〕』(有斐閣、2020年)
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